平成２０年１１月３日
原子力安全・保安院長 薦田康久様
核燃料サイクル規制課長 石井康彦様
三陸の海を放射能から守る岩手の会
核燃料サイクル安全小委員会・第39回WG会議に係わる要望書
“地元住民の不安を親身に受け止め”慎重なる審議をお願いします
謹啓
日頃、日本のエネルギー政策についてのご検討に敬意を表します。１０月２７日（月）日本原燃（株）は「再処理施設高レベル廃液ガラス固化設備のガラス溶融炉A系列における安定運転条件に基づく運転性能確認結果報告」を公開しました。これを見ますと、白金族問題がなんら解決されていない報告であることに驚きを禁じ得ません。このことは、このガラス固化方式は技術上の問題というよりも、固化方式の原理的・根本的な欠陥に由来するように思えます。
つきましては、審議に当たり以下の事項につきまして、慎重に審査確認し発生廃棄物の処理処分をも含め決して環境を放射能で汚染することがないようご配慮お願い申し上げます。たまり続ける高レベル廃液とガラス固化体についてはその想像を絶する危険性に、わたしたち周辺住民は非常に不安な思いで見守っております。貴院におかれましては我が国の未来を見据え、周辺住民が今後とも安心して生活できるよう真剣にかつ“親身”にお考えいただき決してスケジュール優先することなく安全を第一に、場合によっては思い切った再処理政策の方向転換をも視野にいれた論議をお願いいたします。
慎重に確認していただきたい事項
１） 【運転性能確認試験の判定基準】 ガラス固化の対象となる白金族を高濃度に含む「不溶解残渣廃液」が加えられていない試験は、あくまでも予備試験です。本格稼働の定常運転の方式で「安定した運転を形成する」このことができなければなりません。報告では２３バッチ目から「不溶解残渣廃液」が溶融炉に加えられましたが白金族元素堆積の判断指標が上昇したため２７バッチで終了しています。運転性能確認試験の判定基準は「5日間連続でガラス溶融炉の運転ができること」になっています。この条件を満たしていません。
２） 【処理能力確認試験の判定基準】 「ガラス溶融炉への高レベル廃液の供給速度が毎時７０リットルを上回る処理能力があること」と定められています。「不溶解残渣廃液」を混合した廃液がこの基準を満たしているたのでしょうか。２３～２７バッチだけのデータで判定できるのでしょうか。
３） 【高レベル廃液の貯蔵量】ガラス固化しなければならないような危険な廃液を工場に貯蔵することのないようにお願いします。直下の大地震による放射能の環境放出を非常に心配しています。 高レベル廃液の貯蔵量はどこまで許されているのでしょうか。
４） 【高燃焼度の廃液】ガラス溶融炉底部に白金族元素が沈析しトラブルの原因になっております。今回使用された廃液の元となる使用済み燃料の燃焼度はどの程度でしょうか。本格操業になると燃焼度は平均で45000ＭＷｄ/ｔ、最大で55000MWD/tの再処理計画です。日常的に現在よりも高い燃焼度の廃液を使用することになります。低燃焼度でうまくいかないものが、高燃焼度でうまくいくはずがないと思われますがどうでしょうか。
５）
【安全第一】トリチウム、クリプトン85などの放射能は全量が環境に放出されアクティブ試験が進められています。放射能を閉じこめられない技術は未完ではないでしょうか、完成するまで工場規模で行うべきではありません。決してスケジュール優先はしないようにして下さい。周辺住民ひいては海の恵みによって生きる全国民の現在及び将来を真剣にお考え頂き、私たちや未来世代が健康で文化的な生活が未来永劫できるように納得のいく審理を尽くされんことをお願いします。
６）
【放射能による環境汚染】海洋や大気、土壌の環境汚染は決して生じないようにお願いします。
尚、当地方は２度の大地震に襲われています、地震の活動期に入ったようであり、大地震
も視野に入れて論議下さいますようお願いいたします。大地震事故による高レベル廃液の
漏出は絶対にないと保証していただかなければなりません。私たちや未来世代の生命がか
かっているのです。
以上
（連絡先）三陸の海を放射能から守る岩手の会
世話人 永田文夫
020-0004 岩手県盛岡市山岸6-36-8
（電話・fax
019-661-1002）